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DJI AGRAS T70P デビュー

今回はDJI AGRAS T70P についてレポートしてみたいと思います。この機体は2025年11月に日本国内でも発表された最新のフラッグシップモデルであり、従来のT50等を上回る圧倒的な作業能力を持っています。同じく最新のT25Pとの比較もしてみました。

 

 

1. 概要

DJI AGRAS T70Pは、DJI Agriculture部門が開発した最新の大型農業用ドローンです。「効率のエキスパート」というキャッチコピーで位置づけられ、**最大積載量70kg(70リットル)というDJI農業用ドローンではシリーズ最大の能力を誇ります。

従来の散布・播種(粒剤散布)機能に加え、重量物の運搬(リフティング)機能も強化されており、大規模圃場や果樹園、林業などでの作業効率を劇的に向上させるモデルです。

2. 主な仕様(スペック)

項目 仕様詳細
製品名 DJI AGRAS T70P
液剤タンク容量 70 リットル
粒剤(播種)タンク容量 100 リットル(最大積載重量 70kg※)
最大ペイロード(積載量) 70 kg(散布・播種時) / 65 kg(運搬・リフティング時)
最大飛行速度 20 m/s
液剤吐出量 最大 40 L/分(高流量ポンプ使用時)
粒剤吐出能力 最大 400 kg/分
障害物検知 安全性システム 3.0(ミリ波レーダー + Tri-Visionシステム)
バッテリー充電 超高速充電対応(約9〜12分での急速充電が可能)

※積載重量は運用条件により異なる場合があります。

 

3. 主要な特徴と進化点

① 圧倒的な作業効率(70Lの大容量)

従来の大型機(T50の40L/50kg)と比較し、液剤タンクが70Lへと大幅に大型化されました。これにより、一度のフライトで散布できる面積が拡大し、バッテリー交換や薬剤補充の回数(ダウンタイム)を削減できます。最大飛行速度も20m/sに向上しており、広大な農地での作業時間を短縮します。

 

② 進化した散布・播種システム

  • 液剤散布: デュアルアトマイゼーション(二重霧化)遠心ノズルを採用し、作物の種類に合わせて液滴サイズを調整可能です。果樹園向けにはミストノズルセットを選択でき、厚い樹冠の内部まで薬剤を到達させることができます。

  • 粒剤散布: 100Lの大容量タンクを搭載し、肥料や種子の散布においても高いパフォーマンスを発揮します。新しいスクリューフィーダーにより、従来の大容量散布装置の問題点であった詰まりを防止しつつ多様な粒剤に対応します。

 

③ 高度な安全性とAR機能

「安全性システム 3.0」を搭載しています。

  • 検知能力: ミリ波レーダーと3つのビジョンセンサー(Tri-Vision)を組み合わせ、電線や枝などの障害物を高精度に検知・回避します。

  • AR表示: 送信機の画面上に、障害物や飛行ルートをAR(拡張現実)で表示する機能が追加され、オペレーターはより直感的に周囲の状況を把握できるようになりました。

④ 多用途な「運搬」モード

アタッチメントを交換することで、最大65kgまでの荷物を吊り下げて運搬することが可能です。肥料や収穫物の運搬、山間部への資材輸送など、農業以外の物流・林業シーンでも活用が期待されます。

 

4. T50およびT25Pとの位置付け

  • T70P: 大規模農地、果樹園、運搬業務向け(シリーズ最大・最強)。

  • T50: 従来の大型スタンダード(40L/50kg)。T70Pの登場により準フラッグシップ的な立ち位置へ。在庫なくなり次第終売の予定です。

  • T25P: 同時期に発表された中型・コンパクトモデル(20kg/25kg)。小規模圃場や単独作業者向け。

 

 


5. 機体構造と推進システム:なぜ70kgも積めるのか?

T70Pの最大の特徴である「高積載」を実現しているのは、DJI独自のローター構造です。

  • 二重反転ローター(Coaxial Twin Rotor)システム: 大型の4枚のプロペラを配置するのではなく、4軸8枚のローター構成(1つのモーターアームに上下2枚のプロペラ)を採用しています。これにより、以下のメリットが生まれています。

    • コンパクト化: 70kg積載クラスでありながら、折りたたみ時のサイズを大幅に縮小し、軽トラ等への積載を可能にしています。

    • 強力なダウンウォッシュ: 二重反転プロペラが生み出す風圧は非常に強力で、薬剤を厚い作物の群落や果樹の葉裏まで強制的に送り込みます。

 

6. 散布システム(液体)の技術革新

単にタンクが大きくなっただけでなく、ポンプやノズルも進化しています。

  • 磁気駆動インペラポンプ: 従来のプランジャーポンプと異なり、磁気駆動を採用することで、薬剤とモーター部を完全に隔離。腐食性の高い薬剤や肥料液を使用してもポンプの寿命が長く、洗浄も容易です。

    • 最大吐出量: 標準で24 L/分、4ノズルオプション使用時は最大40 L/分という消防ホース並みの流量を実現。

  • デュアルアトマイゼーション(遠心霧化)ノズル: 圧力式ではなく、高速回転するディスクで薬剤を霧化します。

    • 液滴制御: 50μm(微細)〜500μm(大粒)まで、送信機の設定だけで変更可能。風が強い時は粒を大きくしてドリフト(飛散)を防ぐ等の調整が飛行中に可能です。

 

7. 播種・粒剤散布システム(T100粒剤タンク)

「空飛ぶトラクター」としての能力を決定づけるのがこのシステムです。

  • スクリューフィーダーの改良: 肥料、種子、飼料など、粒の大きさや粘度が異なる物質でも詰まりにくい新型スクリューを採用。

  • 高速散布: 尿素などの肥料を毎分190kg、最大出力時には毎分400kg近い速度で排出可能(※粒剤の種類による)。高速飛行中でも散布ムラが起きません。

  • 重量センサー: タンク内の残量をリアルタイムで正確に検知し、「あと何メートルで空になるか」を送信機に表示します。

8. 安全性と自律飛行(Safety System 3.0)

大型機だからこそ求められる、高度な安全機能です。

  • アクティブフェーズドアレイレーダー: 前方・後方の検知距離が最大50mに向上。電線や斜めに入った支線(ワイヤー)の検知能力が高まりました。

  • 暗視(ナイトビジョン)対応カメラ: 周囲が暗くなっても鮮明な映像を送信機に送ることができるため、早朝や夕暮れ時の作業安全性が向上しています。

  • 測量機能の統合: ドローン単体で圃場の測量(マッピング)が可能です。外周を飛行するだけで、最大13度までの傾斜地でも3Dルートを自動生成し、果樹園の起伏に沿った一定高度での散布(対地高度維持)を実現します。

 

9. 電源システム(バッテリーと発電機)

70kgを飛ばすためのエネルギー管理も最適化されています。

  • DB2100 インテリジェントフライトバッテリー:

    • 容量:40,000 mAh(推定値、T50比で増強)

    • 保証サイクル:1,500サイクル

    • 特徴:放熱性に優れた設計で、着陸後すぐに充電を開始可能。

  • D12500i 多機能インバーター発電機:

    • 約9〜12分での急速充電に対応。バッテリー2本と発電機1台があれば、ノンストップでの連続作業が可能です。

DJI AGRAS T25PとT70Pの比較をご要望いただきありがとうございます。

この2機種は、DJIの最新世代「Pシリーズ」であり、共に高い安全性とインテリジェンス(AR機能、高精度レーダーなど)を搭載していますが、その設計思想が根本的に異なります。

  • T25P: 「携帯性・小回りの効くプロフェッショナル機」(中型/25L)

  • T70P: 「究極の効率を追求した産業機」(超大型/70L)

この違いを作業効率シミュレーションとスペック比較で詳細に分析します。


 

10. 主要スペック比較表

項目 AGRAS T25P AGRAS T70P
コンセプト 携帯性・多用途 最大効率・大規模専用
液剤タンク容量 25 L 70 L
粒剤タンク容量 35 L (35 kg) 100 L (70 kg)
作業効率(液剤) 最大 13.3 ha/時 最大 32 ha/時
有効散布幅 約 7 m 約 11 m 〜 13 m
機体の運搬 一人で容易(折りたたみ小型) 二人必須(大型・重い)
システム 安全性システム 3.0 / AR機能 安全性システム 3.0 / AR機能

 

11. 作業効率シミュレーション(20ヘクタール)

日々の標準的な作業量として**20ha(200反)**を散布する場合で比較します。

必要総薬剤量:200 リットル(10L/haの場合)

比較項目 T25P (25L) T70P (70L) 差(T70Pのメリット)
必要なフライト回数 8回 3回 (2.85回分) 約62%のフライト削減
補給・交換の回数 7回 2回 5回減少

補給にかかる総時間


(ダウンタイム:1回5分計算)

35分 10分 25分の短縮

純粋な飛行時間


(概算: 幅と速度の差)

約110分 約70分 約40分の短縮
作業完了までの総時間 約2時間25分 約1時間20分 約1時間5分の短縮

【シミュレーション結果の解説】

T70PはT25Pと比較して、20haあたり約1時間作業時間が短縮されます。

  • T25Pの強み: 補給回数は多いものの、フライト時間が比較的短く、小回りが利き、次の圃場への移動・展開が速いため、機動性に優れています。

  • T70Pの強み: タンクが大きく、飛行速度と散布幅が広いため、飛行時間が短く、地上での作業時間(補給)も大幅に短縮されます。広大な圃場を一気に片付ける能力に優れています。


 

12. 導入判断のための使い分け

T25PとT70Pの選択は、農作業の**「地理的特性」「人的リソース」**によって決まります。

採用モデル T25Pが最適 T70Pが最適
圃場の状況 圃場が細かく分断されている、山間部の棚田、障害物が多い果樹園。 圃場が大規模でまとまっている(1ha以上)、北海道や干拓地など。
運搬・人員 オペレーターが一人で運用・運搬を行う場合。軽トラックのみで運用したい場合。 複数人での運用(バッテリー・薬剤担当者が必要)。トランスポーター(トラックなど)を用意できる場合。
主な用途 液体散布、ピンポイントでの粒剤散布、機動性を活かした防除。 大量の液体散布(70L)、大量の肥料(70kg/100L)散布。
コスト 初期投資額が低く抑えられる。 初期投資額は高いが、作業効率が極めて高く、人件費とランニングコストを削減できる。
T70Pの欠点 機体が大きく重いため、展開・移動・積み下ろしに手間がかかる。  

 

【最終的な判断基準】

  1. 圃場が広い(1枚あたり1ha超)かつ面積が大きい場合: 迷わずT70Pを選び、効率で投資を回収するのがベストです。

  2. 圃場が細かく、移動が多い場合: T70Pの機動性の悪さがネックになるため、携帯性に優れるT25Pを選ぶことで、トータルの作業時間が短縮されます。


この情報をもとに、お客様の圃場の状況(平均的な圃場サイズなど)に合わせて、どちらの機種がより適しているかをさらに具体的にアドバイスすることも可能です。お気軽にお問合せください。

 

 

 

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